AI活用

社内の AI 活用事例の作り方。うまくいった使い方を記録する項目と、効果の測り方・広げる前に確かめること

 株式会社オーグマー

明るい会議室の大きな机の上に、ノートパソコン 2 台と白い紙、付箋、コーヒーカップが置かれている様子

社内で AI を試してうまくいった使い方は、「どの作業に・どう使い・何を人が確かめ・どれだけ時間が変わったか」を 1 枚の記録にまとめると、ほかの社員もまねできる活用事例になります。

  • 記録の項目をそろえる → 作業の名前、使い方、入れた情報の種類、人が確かめた所、使う前と後の時間
  • 効果は時間で測る → 「便利だった」ではなく、同じ作業にかかった時間を前後で比べる
  • 広げる前に確かめる → 入れてよい情報か、間違いが出たときの影響、ほかの人でも同じ結果になるか
  • 置き場所と見直しを決める → 社員が探せる 1 か所に置き、使われていない事例は見直す

この記事では、事例の記録に入れる項目と、効果の測り方、広げる前に確かめることを順に説明します。AI 導入をこれから始める場合は「中小企業の AI 導入は何から始めるか」から読むと流れが分かります。

(見出しの下の画像は生成したイメージです。実際の会社や当社の業務の写真ではありません。)

この記事で分かること

  • 活用事例が社内に広がらない理由
  • 事例の記録に入れる項目
  • 使う前と後の時間の測り方
  • 広げる前に確かめることと、事例の置き場所・見直し

活用事例が社内に広がらない理由

AI を試した社員が「便利だった」と話しても、ほかの社員が同じように使えるとは限りません。広がらない理由は、多くの場合、次のどれかです。

広がらない理由内容
使い方が書かれていない何をどう頼んだのか、元にした資料は何かが分からず、まねできない
効果が分からない「便利」「早い」だけで、どれだけ時間が変わったかが分からない
確かめ方が分からないAI の答えのどこを人が確かめたのかが書かれておらず、そのまま使ってよいか迷う
入れてよい情報か分からない顧客の情報や社外秘の資料を入れてよいかが分からず、使うのをためらう
どこにあるか分からない事例がチャットや個人のメモに散らばり、探せない

これらは、記録の項目をそろえるだけで多くが解決します。

事例の記録に入れる項目

事例は、次の項目を 1 枚にまとめます。表計算のシートや社内の共有フォルダの文書など、社員が普段使う形で構いません。

項目書くこと
作業の名前何の作業か(例:問い合わせへの返事の下書き、会議のメモの整理)
担当した人と部署誰が試したか。質問できる相手が分かるようにする
使ったサービス会社で使ってよいと決めたサービスと、その使い方の種類
頼み方AI に何をどう頼んだか。頼む文章(指示文)をそのまま残す
入れた情報の種類どんな資料・情報を入れたか。顧客名などの個人の情報を入れていないかも書く
人が確かめた所AI の答えのどこを、誰が、何と照らして確かめたか
使う前と後の時間同じ作業にかかった時間を、前と後で書く
うまくいかなかったこと間違いが出た所、向いていなかった使い方
記録した日サービスの機能は変わるため、いつの記録かを残す

特に大事なのは、「頼み方」と「人が確かめた所」です。この 2 つがあると、ほかの社員が同じ使い方を試しやすく、確かめる手間も見積もれます。

事務所の机で、手元が 2 枚の白い紙を左右に並べて見比べている様子。横にノートパソコンがある

効果は「時間」で測る

効果を比べるときは、「便利だった」という感想ではなく、同じ作業にかかった時間で比べます。

  1. 使う前の時間を測る:AI を使わずに、いつもの作業を数回して、1 回あたりの時間を記録する
  2. 使った後の時間を測る:AI を使って同じ作業を数回し、人が確かめて直す時間も含めて記録する
  3. 回数をかける:1 か月にその作業が何回あるかをかけて、月あたりの時間に直す

AI の答えを確かめて直す時間を入れないと、効果を大きく見積もりすぎます。直す時間が長く、使う前と変わらない作業は、向いていない作業として記録に残すことも大事です。費用と効果の比べ方は「AI で業務を自動化するときの費用の考え方」で説明しています。

広げる前に確かめること

事例を社内に広げる前に、次の 3 点を確かめます。

1. 入れてよい情報か

個人情報保護委員会は、生成 AI のサービスに個人情報を入れる場合の注意を示しています。事例の中で、顧客や社員の個人の情報、社外秘の資料を入れていないかを確かめます。入れている場合は、入れずに済む頼み方に直すか、会社のルールで使ってよいとされている使い方かを確かめてから広げます。

2. 間違いが出たときの影響

AI の答えには間違いが含まれることがあります。社内のメモの整理と、お客様へ送る文書や見積りの下書きでは、間違えたときの影響が違います。影響が大きい作業ほど、人が確かめる所を細かく決めてから広げます。

3. ほかの人でも同じ結果になるか

試した社員とは別の社員に、記録の手順どおりに試してもらいます。同じような結果にならない場合は、頼み方や元の資料の書き方が足りていないので、記録を直します。

総務省と経済産業省が出している「AI 事業者ガイドライン」でも、AI を使う側が、使い方の範囲を決めて、結果を人が確かめることなどの考え方が示されています。

机の上で、印刷した書類に赤ペンで印を付けて確かめている手元と、横に置かれたノートパソコン

事例の置き場所と見直し

  • 置き場所を 1 か所に決める:共有フォルダやシートなど、社員が探せる 1 か所にまとめる
  • 一覧を作る:作業の名前、部署、効果(月あたりの時間)が並ぶ一覧があると、自分の仕事に近い事例を探しやすい
  • 見直す時期を決める:サービスの機能や料金、会社のルールが変わると、事例の使い方も変わる。数か月ごとなど時期を決めて見直す
  • 使われていない事例も残す:向いていなかった使い方の記録は、同じ失敗を繰り返さないために役立つ

社員に使い方を教える研修の題材にも、社内の事例を使うと、自分の仕事に近い練習になります(「社員向けの AI 研修は何を教えるか」)。

よくある質問

Q. 事例はどのくらい集まったら広げてよいですか?

数の決まりはありません。1 つでも、記録の項目がそろい、ほかの社員が試して同じような結果になったら、その作業の担当者に広げてよいと考えます。

Q. 失敗した使い方も記録したほうがよいですか?

記録したほうがよいです。向いていない作業が分かると、ほかの社員が同じ試しをしなくて済みます。

Q. 頼む文章(指示文)をそのまま共有してよいですか?

共有して構いませんが、指示文の中に顧客名や社外秘の情報が入っていないかを確かめてから共有します。

Q. 効果の時間はどこまで正確に測る必要がありますか?

大まかで構いません。同じ作業を数回測った平均で、前と後の違いが分かれば、広げるかどうかの判断には足ります。

まとめ

  • 活用事例は、作業・頼み方・入れた情報・人が確かめた所・前後の時間を 1 枚にまとめる
  • 効果は、人が確かめて直す時間も含めて、同じ作業の時間で比べる
  • 広げる前に、入れてよい情報か、間違いの影響、ほかの人でも同じ結果になるかを確かめる
  • 事例は 1 か所に置き、時期を決めて見直す。向いていなかった使い方も残す

出典と調査の方法

生成 AI の利用の注意と、AI を使う事業者の考え方は、次の公式サイトで確かめました(2026 年 10 月 19 日確認)。

記録の項目、効果の測り方、広げる前の確かめ方、置き場所と見直しの決め方は、当社の業務の仕組みづくりの考え方から一般的な進め方としてまとめたもので、推測を含みます。特定の会社の事例や効果の調査ではありません。使えるサービスと利用の条件は、提供する会社によって違います。